学校事務の日常

第2話:Excel地獄からの脱出

yokosukakiku-97

入力より大事なもの

年度末。新人の陽奈は、数字と格闘していた。
「数字が合っているのに、なぜか怒られる」
その理由がわからず焦る陽奈に、主任の華子が伝えたのは・・・。
「Excelは道具。事務の本質は“流れ”を作ること。」

年度末の“ Excel地獄 ”

田中陽奈/新人
田中陽奈/新人

すみません、また式が壊れちゃって…

3月の職員室。
年度末の報告書類が山積みになり、コピー機もパソコンもフル稼働。
新人の田中陽奈は、モニターにかじりついていた。

年度末。モニターの画面にも机の上にも、Excelファイルが並んでいた。
陽奈は、朝から数字と格闘していた。

旅費の精算、出張伺い、補助金の実績報告。
どれもExcelで処理しなければならない。
だが、シートを開くたびに「#REF!」のエラーが現れる。

田中陽奈/新人
田中陽奈/新人

関数も覚えたし、ショートカットも使えてるのに、
なんでこんなにうまくいかないんだろう…

陽奈の独り言を聞きつけた華子が、コーヒー片手にそっと近づく。

鈴木華子/主任
鈴木華子/主任

陽奈さん、少し休憩しようか。目が三角になってるよ

仕事が止まる本当の理由

事務室のサイドテーブルで、華子が陽奈のパソコンのファイルを開く。
シートは完璧に整い、セルも揃っている。式も正しく設定されている。

鈴木華子/主任
鈴木華子/主任

そうね、関数は合ってるね。でも……流れが止まってる気がする。

田中陽奈/新人
田中陽奈/新人

え、「 流れ 」ですか?

鈴木華子/主任
鈴木華子/主任

たとえばこの旅費報告。A先生が確認する前に、校長先生に決裁が回ってる。
最終決済者は校長だけど、現場はまだ、金額確定前の段階。
だから、あとで修正が発生して“やり直し”になるのね。

陽奈はハッとした。いつも「早く提出すること」ばかり意識していた。
誰が確認して、誰が決裁して、どの資料と紐づくのか—
その“流れ”を見ていなかった。

田中陽奈/新人
田中陽奈/新人

Excelのミスじゃなくて、流れのミスだったんですね……。

鈴木華子/主任
鈴木華子/主任

そうなの。事務の仕事ってね、
データを作るだけじゃなくて、
“ 人と人の動きの中で、数字を動かすこと ”なの。

Excelは道具にすぎないけれど、
どこにどう渡すかという“流れ”が地図になるの。
道具と地図、両方そろって、はじめて仕事は前に進むのよ。

ずっとパソコンの中だけで完結させようとしていたが、根本の“業務の流れ ”がズレていれば、どんな関数も正しい結果を出せない。

Excelは“ 道具 ”、事務は“ 流れ ”

翌週。 
陽奈は書類を作る前に、まず紙にフローを書き出した。

先生(担当) → 学年主任 → 教頭 → 校長 → 会計 → 提出

どこで確認が入り、どの時点で金額が確定するか。
流れを意識して確定した数字を使う。それだけで、エラーも、手戻りも激減した。

「田中さん、今回はすごく早かったね」
「助かったよ」

教員からそんな声をかけられたとき、陽奈は少し胸を張った。
——Excel地獄から抜け出す道は、関数ではなく“流れ”にあった

今日の学び

Excelを使いこなすことは、学校事務において大事なスキル。
でも、事務の仕事で本当に求められるのは、

「 結果の数字を作る力 」より「 流れを理解する力 」
「 操作技術 」ではなく「 段取りと理解力 」が鍵となる。

正確なデータも、流れを理解せずに使用すれば混乱を招く。
誰が、いつ、どんな目的で使うのかを意識してデータを使用すれば、
Excelは“ 地獄 ”ではなく“ 便利なツール ”となる。

【 次回予告 】

第3話:「教員との” すれ違い “を防ぐ“共有ホルダ」


ABOUT ME
鈴木 華子
鈴木 華子
高等学校 事務主任
はじめまして。鈴木華子です。
高等学校で事務主任を務め、学校事務歴は15年になります。
一般企業や生命保険会社での事務経験を経て、現在は学校事務で働いています。
このブログでは、学校事務職員が知っておきたい「 実務 」「 キャリア 」「 転職 」「 働き方 」について、
50代事務主任のホンネで発信しています。
同じ立場の方、これから学校事務を目指す方にとって、現場で役立つヒントをお届けできたら嬉しいです。
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