第2話:Excel地獄からの脱出
年度末。新人の陽奈は、数字と格闘していた。
「数字が合っているのに、なぜか怒られる」
その理由がわからず焦る陽奈に、主任の華子が伝えたのは・・・。
「Excelは道具。事務の本質は“流れ”を作ること。」
年度末の“ Excel地獄 ”

すみません、また式が壊れちゃって…
3月の職員室。
年度末の報告書類が山積みになり、コピー機もパソコンもフル稼働。
新人の田中陽奈は、モニターにかじりついていた。
年度末。モニターの画面にも机の上にも、Excelファイルが並んでいた。
陽奈は、朝から数字と格闘していた。
旅費の精算、出張伺い、補助金の実績報告。
どれもExcelで処理しなければならない。
だが、シートを開くたびに「#REF!」のエラーが現れる。

関数も覚えたし、ショートカットも使えてるのに、
なんでこんなにうまくいかないんだろう…
陽奈の独り言を聞きつけた華子が、コーヒー片手にそっと近づく。

陽奈さん、少し休憩しようか。目が三角になってるよ
仕事が止まる本当の理由
事務室のサイドテーブルで、華子が陽奈のパソコンのファイルを開く。
シートは完璧に整い、セルも揃っている。式も正しく設定されている。

そうね、関数は合ってるね。でも……流れが止まってる気がする。

え、「 流れ 」ですか?

たとえばこの旅費報告。A先生が確認する前に、校長先生に決裁が回ってる。
最終決済者は校長だけど、現場はまだ、金額確定前の段階。
だから、あとで修正が発生して“やり直し”になるのね。
陽奈はハッとした。いつも「早く提出すること」ばかり意識していた。
誰が確認して、誰が決裁して、どの資料と紐づくのか—
その“流れ”を見ていなかった。

Excelのミスじゃなくて、流れのミスだったんですね……。

そうなの。事務の仕事ってね、
データを作るだけじゃなくて、
“ 人と人の動きの中で、数字を動かすこと ”なの。
Excelは道具にすぎないけれど、
どこにどう渡すかという“流れ”が地図になるの。
道具と地図、両方そろって、はじめて仕事は前に進むのよ。
ずっとパソコンの中だけで完結させようとしていたが、根本の“業務の流れ ”がズレていれば、どんな関数も正しい結果を出せない。
Excelは“ 道具 ”、事務は“ 流れ ”
翌週。
陽奈は書類を作る前に、まず紙にフローを書き出した。
先生(担当) → 学年主任 → 教頭 → 校長 → 会計 → 提出
どこで確認が入り、どの時点で金額が確定するか。
流れを意識して確定した数字を使う。それだけで、エラーも、手戻りも激減した。
「田中さん、今回はすごく早かったね」
「助かったよ」
教員からそんな声をかけられたとき、陽奈は少し胸を張った。
——Excel地獄から抜け出す道は、関数ではなく“流れ”にあった
Excelを使いこなすことは、学校事務において大事なスキル。
でも、事務の仕事で本当に求められるのは、
「 結果の数字を作る力 」より「 流れを理解する力 」
「 操作技術 」ではなく「 段取りと理解力 」が鍵となる。
正確なデータも、流れを理解せずに使用すれば混乱を招く。
誰が、いつ、どんな目的で使うのかを意識してデータを使用すれば、
Excelは“ 地獄 ”ではなく“ 便利なツール ”となる。
