制度変更を聞いた当時の私たちの心境

定年延長の発表は、2023年のある日
社内通達を見た瞬間、太朗は少し固まったそうです。
その日の夜、いつものように太朗の単身赴任先 ↔︎ 福岡の自宅でLINEのビデオ通話がはじまりました。
ちょっと今日会社で重大な発表があってさ。

なに? (あれ、この切り出し方、悪い予感するな)

定年がさ、60から65歳に延長されるんだって。
まさか、自分の代から変わるとは思わなかったよ。
定年延長の方向って話は前からあったけど、まさか来年からとはね…

えっ、それって太朗たちからってこと?
退職金はどうなるの? (お金の話より、他に言う事あったのに・・・反省)

定年が60歳だと思っていた私たち
太朗の会社では、それまでは
60歳で一度退職 → 退職金を受け取り、契約社員として再雇用 → 65歳で完全退職
というのが通常のパターンでした。
転勤の多い太朗の会社も、再雇用の5年間は地元勤務になるケースがほとんど。
だからこそ「ようやく福岡で一緒に暮らせる」と期待していたんです。
今までも、単身赴任で家を空けている期間の多い太朗の代わりに、
華子はワンオペで子育てや仕事をがんばってきました。
太朗も慣れない自炊や家事も、なんとかこなしていました。
「もう少しで報われる」──そう思っていた矢先の、まさかの制度変更でした。
働けるのはありがたい反面、予定していた人生設計が崩れていく感覚でした。
私たちの想定では…
- 60歳で太朗は退職 → 福岡に戻り、契約社員として65歳まで勤務
- 華子は、2028年8月で60歳、年度末の2029年3月で定年退職
- 2029年、夫婦でゆっくり“次のステージ”を考える
同期もみんな動揺してたよ。
“あと5年か…いや、働けるのはありがたいんだけどさ” って。
みんなちょっと複雑な表情だったな。

60歳以降も働けることは決して悪いことではありません。
でも、60歳という節目を目指して、私たちもがんばってきたのです。
「一緒に暮らせる日を楽しみに」そのゴールテープを目指してきたのに、
突然テープが5メートル先に伸ばされたような、そんな喪失感がありました。
そして今
そして今、私たちは “新しい5年” とどう向き合うか、
夫婦で少しずつ考え直し始めています。